数学基礎(Basic Mathematics IIA) 2011年度前期
火曜日2,3限

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第1回(4/12)

線形性とは、用語説明など
内容: (注:上の x は1変数の x を表すだけでなく、一般にベクトル x=(x1,x2,…,xn) などを表します。)

第2回(4/19)

写像の続き、複素数。

第3回(4/26)

複素数の掛け算。1のべき乗根。数ベクトル空間。

第4回(5/10)

行列登場。

第5回(5/17)

行列の簡約化と連立一次方程式。

レポート問題の配布。

以下のレポートを解いて、レポートボックスに提出してください。
レポート問題
レポートボックスは来週作る予定です。

第6回(5/24)

基本行列、逆行列

(5/31)

休講

第7回(6/7)

行列式

第8回(6/14)

サラスの方法、行列式の展開

第9回(6/21)

正則行列のいくつかの言い換え。余因子行列。

第10回(6/28)

クラメルの方法.ファンデルモンテの行列式.

第11回(7/5)

巡回行列式.演習.
演習の回答状況
火曜日2限
1,2,3,6,8(1),11
火曜日3限
1,2,3,5(1,2,4),6,8(1,2,4),9(1,2,3),11(1,2),25(1,2),27(1,2,3,4),28,30(1,3,6),31,34(1,2),35(2),37

第12回(7/12)

面積・体積、演習

(7/19)休講


第13回(7/26)定期試験

試験問題
解答例

第14回(8/2)

線形計画法。演習。

コメント

この欄は、質問を受けた個所や、授業で言い忘れたことなどを補足しておきます。
メール(アドレスは下に記載)での質問も受け付けます。

線型について

必要・十分条件について

記号について

写像について

cos(2π/5)の値について。

[!発展!] z5-1=0の解について

ギリシャ文字について

数学では文字の式の時にギリシャ文字がよく登場します。 ここで紹介しておきます。左は大文字、右は小文字。

代数学の基本定理

複素数係数をもつn次多項式の根には必ず、複素数の範囲で丁度n個の解をもつという定理を 代数学の基本定理と言います。 ただし、重解や3重解はそれぞれ、2個や3個などと解の数を数えます。 歴史的にはガウスが初めてこの定理の厳密な証明に成功しました。 実数係数の多項式は実数上でいつも解があるとは限りません。 例えば、 x²+1=0 は実数係数多項式ですが実数では解を持ちません。

複素数についての注

実数は複素数に含めないと勘違いしている人がいますが、実数も複素数の特殊な場合(a+0i∈C)なので、 立派な複素数です。

n次対称群 Sn (エスエヌ)

n次対称群というものを授業で紹介しましたが、これを簡単に理解する方法があります。 それがあみだくじです。 授業で例として挙げた下のような置換を考えましょう。 上に数字 1,2,...,n をおき、下に、置換された値を置きます。 それらを同じ数字同士を線で結びます。 その線を交点の周りで少し平らにして、他の部分を 上下にぴんと張ると右のようなよく見るあみだくじが現れます。 一般に、あみだくじとは、左のようなヒモの集まりと考えてよいでしょう。 縁日で見かける紐引きや結婚式で行われるブーケプルズはあみだくじと 考えられます。
置換とはこのような、上下に配置された同数個の点を線分で結んだものとして理解できます。 逆にこのような線分があれば置換が1つ与えられることは言うまでもありません。 これが置換の幾何学的イメージです。
amidakuji
結んだ線上にも対応する数字を与えることにしましょう。 上で書いた線分達の交わる交点で、与えられた数字が交換されていることに注意してください。
例えば一番左の交点は 1 と4 に対応する線分の交点ですがその交点の上下で 1 と 4 の 左右の位置が入れ替わっています。 これらの数字の交換は実は互換に対応します。 この絵はこのような線分の入れ替えの複合によって成り立っていることがわかります。 つまり、置換が互換の積でかけていることをこの絵によって説明しているわけです。
amidakuji2
上のように、交換された数字をその下に書いていき、その交換をそのまま 互換として右から並べていくと
(3,5)(3,7)(2,6)(4,1)(4,2)(6,3)(5,7)(6,5)(4,3)
と書けることがわかります。(確かめよ。) 交点同士の上下関係が積の右左関係になるように順番を保ってください。 ちなみにこの置換の符合は (-1)9= -1 となることもすぐわかります。
9 は交点の数です。 結局符合とはこうして書いた交点の偶奇を求めていることに他なりません。

置換の符合について

授業中で置換の符合は互換の表し方によらないことを言いましたがこの場で、それを以下のように説明しましょう。 まず、
σ=( i 1, j 1 ) ( i 2, j 2) .... ( i p, j p )
σ=( k 1, l 1 ) ( k 2, l 2) .... ( k q, l q )
のように置換σ∈Snが互換の表し方として2通りあったとします。 このとき、
σσ-1=( i 1, j 1 ) ( i 2, j 2 ) .... ( i p, j p )( k q, l q ) .... ( k 2, l 2 ) ( k 1, l 1 )=e
となりますが、これは恒等変換つまり単位元です。 つまり、単位元 e がある p+q 個の互換で表されたことになります。 ここで、 p+q が奇数であるとして矛盾を導きます。 ( p+q が奇数であるとすると、p と q の偶奇は一致しなくてσの符合が互換の表し方によってしまうことになります。) p+q=R と置きなおし、さきほどの互換の積を改めて
e=τ1 τ2 ... τR
とします。 このとき、1つの互換 ( i , j ) は下のようなあみだくじに対応します。
gokandayo
i と j が入れ替わり、その他はまっすぐ下に降りているのがわかるでしょうか。 このあみだくじでは、線分の交点は奇数個です(中央に i と j の交わりの1点と、i と j の間の線分と2本ずつ交わっています)。 表示
e=τ1 τ2 ... τR
が表す互換の積をこの絵を用いて表すと、このあみだを縦に R 個並べることになります。 そうすると交点は全部で R×(奇数) でやはり全ての交点は奇数個です。

この置換は全体として単位元であることを思い出しましょう。 つまり、線分をたどると、1, 2, .... , n はこの順番の通りに戻ってきます。 ここで、任意の0≤ i< j≤nをとります。 2つの線分 i, j もやはり、単位元による変換で i→i, j→j となっていますがその間の交点は必ず偶数個です。 つまり、一方の線分が一方の線分を超えた場合、もう一度またぎ直さないと元の位置に戻ってこれないからです。 よって、このことは任意の相異なる i と j について言えますから、 交点の総数は偶数個になります。

これは上に書いたことから明らかに矛盾します。 よって、 R は偶数でなければならないことになります。 このことによって、σ を互換の積として表したとき、その互換の数の偶奇はいつも一定であることがわかりました。 この一定の偶奇を用いて、置換σの符合を定義していたわけです。

列に関する基本変形

授業では行に関する基本変形を定義しましたが、列に関する基本変形も同様にあります。 列に関する基本変形は基本行列の右からの積に対応します。 対応して行列式の変化は次のようになります。

次に列の基本変形も混ぜて行列を階段行列にします。 まず任意の行列 A を行に関する基本変形をします。 そうすると A は XA に移ります。 X はいくつかの基本行列の積で、XA は簡約行列です。 さらにこの行列を列に関する基本変形を行います。 行列は XAY となります。 Y は基本行列のいくつかの積です。 こうすることで XAY は階段行列で、主成分以外全て 0 の行列にすることができます。

ここで注意したいことは、連立方程式を解く場合は列の基本変形を使ってはいけないということです。 列を基本変形すると変数 x1,x2,...,xnがずれてしまい、最終的に (x1,x2,...,xn)=(a1,a2,...,an) という形で 求まらなくなってしまいます。

全射と単射

全射と単射をここで説明します. 全射と単射を分かる前に写像の定義はわかっていますか? もう一度繰り返すと、
写像 f とは、全ての A の元 a に対してただ一つ B の元 f(a) を対応させる規則のこと.
を言います. 全射と単射が分かっていない人の半数が写像の定義がきちんとわかっていません. これが分かった上で、
[単射とは]

写像 f:A→B であって、A の違う元が同じ B の元に行くことはないことである.
つまりもし、x1とx2が B 同じ元 f(x1)=f(x2) に行くとすると x1=x2である.

]
A の元は B に行ったときに重ならない.
[全射とは]

写像 f:A→B であって、全ての B の元は f からの像として A から来ている. つまり、任意の B の元 b はある A の元 a が存在して f(a)=b となる.


B の全ての元に A から来ている. ただ、A から同じ元に行っていてもよい.
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tange  (あっとまーく)  kurims.kyoto-u.ac.jp
(あっとまーく)=@