実数・計算・2階算術  講師:田中一之先生(東北大理)

ヒルベルトとベルナイスが導入した2階算術は,本来の目的 である実数論のみならず,可分空間における解析学や可算代数 の理論などかなり広範囲の数学の基礎となりうる. そこで,普通の数学の定理を証明するのに,どのような2階 算術の公理系が必要かを調べているのが「逆数学プログラム」 であるが,その研究において意外に厄介な問題となるのが, 実数の計算である.例えば,連立一次方程式を普通に解く場合 には,計算の途中で係数がゼロになるか否かを何度も判定する. 実数は有理数の無限列であるから,それがゼロか否かの判断は 有限的にはできず,これを繰り返すためには非常に強い公理が 必要になってしまうのである.本講演では,前半で「逆数学」 の基本的な考え方と結果を説明し,後半でこの問題を回避 する方策として,タルスキの定理のアイデアを用いた小結果を 紹介する.