線形代数II演習 2012年度2学期 水曜日5限 
第1回(9/5)
 
連立一次方程式の復習、写像、全射、単射。プリント 
 内容 
2x2行列の連立一次方程式(2変数の場合のクラメルの方法) 
2x2行列の行列式の定義。 
連立一次方程式の解法。復習。 
写像、全射、単射。 
 
   
 
今学期も始まりました。
なるべく毎週出席して少しずつ線形代数を理解していきましょう。
連立一次方程式に関する復習をしました。
写像、全射、単射について初めての演習でした。
皆さん理解するのに少し戸惑ったようで少し停滞しました。
大事なところなのでじっくり理解しましょう。
線形代数IIIでも全射、単射などもう一度行います。
また、私の2011年度の授業ページ (下の方)
に図いりで全射、単射の解説もありますのでそちらもご覧ください。
[補足] 単射の定義は違う元が違う元に写される (x≠yならばf(x)≠f(y)) と定義しましたが、
実際単射を示すにはその対偶 (f(x)=f(y)ならばx=y) を使う方が便利です。
単射でないことは (f(x)=f(y)であり x≠y となるものを探す) 方針で行うとよいです。
今回は演習を集めませんでした。
来週までに、例題、問題をやって来てください。
問題2-2(2)は解きにくい(問題としてちょっと難しすぎるかも)なので
できるところまでで結構です。
今回は2x2の場合にのみ行列式を定義しています。
レポートはそれを用いて計算してください。
第2回(9/12)
 
プリント 
 内容 
 1 から n までの数字の集合からそれ自身への全単射を置換(n 次対称群)という。 
置換は n! 個の元を含む。 
置換全体には積(可換でないので積の順番が大事です。)が入る。 
置換には逆置換、恒等置換( =e )が存在する。 
互換、巡回置換。 
全ての置換はあみだくじである。 
あみだくじから置換を互換の積に書くこと。 
偶置換、奇置換。 
 
   
 
問題2-1はあみだくじを使って置換を(隣り合う)互換の積に書く問題ですが、
一般にあみだくじをこのように使わなくても互換の積に書くことができます。
(隣り合う互換にしなければならないわけではありません。この問題は教育的配慮からこのような指定が
あります。)
この問題の(1)は6,7は動かしませんから(隣り合わないものもの含めてよいなら)互換の
中に登場させる必要がありません。つまり、(1,2,3,4,5,8)の間の互換でそれぞれ (2,3,4,1,8,5)
に移るものとしてしまえばよいことになります。
つまり、まず、置換を互いに交わらない巡回置換に書いておいて、それぞれを
互換の積に書いておけばよいのです。
置換  → 互いに交わらない巡回置換の積  → それぞれの巡回置換をあみだくじを使って互換の積 
とすれば無駄なく置換を互換の積で書くことができます。
互いに交わらない巡回置換 
長さがnの巡回置換 
恒等変換は e で表します。
第3回(9/26)
 
プリント 
 内容 
3x3行列の9つの成分のうちどの2つも行においても列においても重ならないような3つの成分の組をみつける。 
そのような組は 3!=6 通りある。 
一般の場合は n! 通りある。 
さらにそのような組は置換 σ を使って {a1σ(1) , a2σ(2)  , ... an-1σ(n-1) , anσ(n) } とかける。 
行列式の定義。 
行列式は今取った n 個の組 {a1σ(1) , a2σ(2) , ..., an-1σ(n-1),  anσ(n) } を全て掛け合わせて、... 
σ の符合をかけて、全ての置換で足し合わせることで得られる。 
サラスの方法。 
1列目がt (a1 ,0,0,...,0) の場合の行列式の計算。(上の t は転置の意味です。 
 
   
 
今日は定義から行列式を計算することにこだわって教えました。
下記の 3x3 の場合を参照。 
「...ィミフメイ。。。」と思った人も多かったと思いますが、定義から行列式を計算することで行列式はどんな原理でできているか分かったのではないでしょうか。
とにかくめんどくさい。と思った人もいるかもしれません。
やったことは、3x3 の場合に
同じ行や列にかぶらないように3個の成分を選ぶ 選んだ3つ組をある置換を使って表す 置換ごとに取った3つと符合 ε を掛け合わせて全ての置換で足す  
こうすることで 3x3 の行列式を計算することができますが、一般の nxn でも同じように行列式が計算できます。
ただ、このように計算すると nxn の時とても大変になります。(ご想像通り。)
そこでいろいろと工夫してこれから行列式を計算する方法を学びます。
今日はその一つ、サラスの方法 ( 3x3 の場合の行列式の万能公式です)を教えました。
計算方法は教科書にもありますし、授業の方でも教えている。
私も教えたのでここには書きません。
今日の授業では、何も分からなくても最低限サラスの方法だけでも覚えて下さい。
欲張りなこの授業は、他にも公式を教えました。
ある行or列がスカラー k で割り切れる行列 一列目が (a1 ,0,0,....,0) となっている行列  
です。
この2つの場合は今日の定義から計算する の趣旨から見るとすぐに分かります。
それぞれ
行列式は k 倍される 
a1  されて一つ小さいサイズ(次数)の行列の行列式に帰着される 
 
が答えです。
今回出した問題は教科書にある問題も含まれています。やってみてください。
3x3 行列の行列式を定義から計算すること。
 
 
第4回(10/3)
 
プリント 
 内容 
以下の行列式の公式がある。転置を使うことで行に関しても同じ公式が成り立つ。
det(…0…)=0 
det(…ka…)=kdet(…a…)(基本変形I) 
det(…a1 …a2 …)=−det(…a2 …a1 …)(基本変形II) 
det(…a…a…)=0(カンニングの原理) 
det(…a1 +ka2 …a2 …)=det(…a1 …a2 …)(基本変形III) 
det(…a1 +a2 …)=det(…a1 …)+det(…a2 …)(ベクトルの和) 
det(t A)=det(A)(転置) 
det(A+B)≠det(A)+det(B)(等式は一般に成り立たない。) 
 
   
 
今日は行列式の効率のよい計算の実践練習をしました。
大事な公式は基本変形I,II 、ベクトルの和 、転置 です。
基本変形III は和 と基本変形I を組み合わせれば出ますが、実践的なのは
基本変形II,III と留年の原理 です。
これを組み合わせることで簡約化さえできれば、どんどん次数を下げていくことができます。
カンニングの原理 と留年の原理 の由来は
授業で説明しましたが下にも書きました。
行列式計算でたまに威力を発揮します。
ただし気付かず素通りしてしまうときもあります。
ちなみに2つの命名は飯高茂先生(学習院大学)の数学セミナー2012.9の記事から
勝手に拝借しました。
おそらく使っている人は少ないと思いますのでこれから広めていこうと思っています。
皆さんもどんどん使ってください。
カンニングの原理 ......同じ答案が見つかるとカンニングがばれてその試験が0点になってしまうように同じベクトルが行列内で見つかると行列式が0になってしまうこと。留年の原理 ......0点(不可)の科目が多いと見かけ上3年次であっても実質的には2年次と同じこと、つまり留年してしまうように、ある成分をのぞいて0の行列の行列式は3次の行列式の計算も2次の行列式の計算と実質的に同じになってしまうこと。
第5回(10/10)
 
プリント 
 内容 
次の条件は同値である.
Aを nxn 行列とする.
det(A)≠0 
A は逆行列を持つ.つまり正則である. 
A=(a1 a2 ...an )としたときに、a1 ,a2 ,...,an は一次独立である. 
Ax=0 が非自明な解を持たない. 
 
小行列式
ある行と列を取り除いて得られる行列を小行列といいます. 
小行列が正方行列のときその行列式を小行列式といいます. 
 
   
 
Ax=0 の非自明な解とは x≠0 となる解を意味する.
行列式が0かどうかは行列が正則であるかどうかの判定、
ベクトルが一次独立であるかどうかの判定、連立一次方程式
が非自明な解をもつかどうかの判定に関して
完全に答えを与えることができます.
上の条件の3つ目の条件は横ベクトルにしても同じです.
第6回(10/17)
 
プリント 
 内容 
余因子展開
縦ベクトルを次のように分解する. vj =a1j e1 +a2j v2 +...+anj en  とする.
ここで、ej  は j 成分だけ 1 でそれ以外は 0 となる標準ベクトル. 
det(A)=det(v1 v2 ...vj ...vn ) のときに、行列式の和の公式を用いて 
det(A)=det(v1 v2 ...vj ...vn )=a1j det(v1 v2 ...e1 ...vn )+a2j det(v1 v2 ...e2 ...vn )+...+anj det(v1 v2 ...en ...vn ) 
となる. 
det(v1 v2 ...ei ...vn )=(-1)i+j |Aij |と書くことができる. 
この等式は基本変形IIを繰り返すことで得られる.(Aの成分の順番を保たなければならないので変形を繰り返す時は注意が必要です...) 
det(A)=(-1)1+j |A1j |+(-1)2+j |A2j |+...+(-1)n+j |Anj | 
この式が余因子展開です. 
余因子行列の定義. A~=(a~ij ) 
ただし、a~ij =(-1)i+j |Aji |  
小行列の転置を取っているので注意が必要です. 
AA~=det(A)E 
平行六面体の体積は 3x3 行列の行列式の絶対値になります. 
 
   
 
余因子展開は行列を基本変形を使わなくても計算できる方法です.これを繰り返せば
留年の原理から次数をいくらでも小さくすることができます.
展開は授業では行ベクトルで行いましたが、列でも行えます.
第7回(10/24)
 
プリント 
 内容 
固有多項式
 ΦA (x)=|xE-A| (固有多項式) 
 ΦA (x)=0 の解を固有値という. 
 α を固有値とするとき、αE-A は正則ではないので、連立一次方程式(αE-A)v=0 に非自明解 v が存在する. 
 それを α に関する固有ベクトルという. 
固有ベクトルになる v は1つに定まらないが non-zeroであればどれをっても α に関する固有ベクトルという. 
 
外積
u,v,a  (縦ベクトル)を3次元実ベクトル空間のベクトルとする. u×v を 3×3行列 A =(a u v )において、u×v=(|A11 |,-|A21 |,|A31 |) という.(結局 u× v は a に因りません.) 
↑は定義がプリントと転置になっていることに注意!!(もちろん同じものを定義しています.) 
u× v=-v× ;v (性質その1) 
u× u=0 (性質その2) 
u×v は u と v に直交する (性質その3) 
||u×v || は u と v で作る平行四辺形に直交する. (性質その4) 
a˙(u×v) は a, u, v で作られる平行六面体の体積です. (性質その5) 
 
   
 
固有多項式を導入しました。固有多項式=0の解を固有値といいます.
このとき得られるベクトルを固有ベクトルと言います.
定義は上に書いたとおり.
固有値や固有ベクトルは数学に限らず物理や化学など頻繁に登場します.(例えば固有振動、波動関数を固有関数展開、エネルギー準位など).
これ以降の詳しい数学の解説はこの続きの講義(線形代数続論)になります.
ここではそれらの概念を定義して計算することができることが目標です.
外積を導入しました.
外積の性質は今までの行列式の性質から自然に導かれるのでよい演習になると思います.
また、外積はベクトルの作る平行四辺形から作る面積を与えており、行列式の仲間と考えられます.
外積は多変数の微積分においてその面積要素としても登場します.
第8回(10/31)
 
n  を求めること.プリント 
 内容 
ケイリーハミルトンの定理
 ΦA (x) を固有多項式とすると ΦA (A)=O が成り立つ. 
 この公式を用いてどんなに大きい N に対しても AN  を低い次数の A の多項式に落とすことができます. 
 
固有多項式から固有値、固有ベクトル、対角化、An  を求めること.2x2の場合.
ΦA (x) の固有値を α β とします. α と  β は相異なるとしておきます.  このとき、αE-A は正則ではないので、 (αE-A)v=0 となる 0 ベクトルでないベクトルが存在します.
 
このベクトルを固有ベクトルと言います. 
固有ベクトルは連立1次方程式 (αE-A)v=0  (βE-A)v=0 を解くことで得られます. 
それをそれぞれ vα , vβ  と書くことにすると 、Avα =αvα  , Avβ =βvβ  が成り立ちます. 
その式を並べて、 A(vα  vβ )=(αvα  βvβ )=
 
とすることができます.最後の対角行列を T と置き、 P=(vα  vβ ) とおくと、 
P-1 AP=T となります.これを A の対角化と言います. 
これを n 乗する. 
(P-1 AP)n =P-1 An P=Tn  なので 
An =PTn P-1  
An  は 
のように解くことができます. 
 
   
 
今日のポイントは2点あります.
1つ目はハミルトン・ケイリーの定理は行列の固有多項式に A を代入した行列は零行列であることで、それを用いることで
A の高いべきの計算が容易にできるようになることです.
2つ目は固有値と固有ベクトルを計算することで、行列の n 乗を計算することができることです.
詳しくは上の四角の中を見てください.
とりあえず2x2行列の行列の n 乗で互いに固有値が異なる場合を解説しました.固有値を求めることはできますが、
固有ベクトルは連立一次方程式を解かなければならないので難しいですね.
ただ、この場合2元連立1次方程式なのでそれほど手間にはならないと思います.
固有ベクトルの方向が決まります.
問題8-1(3)の訂正 0 =F1 =0 となっていますので、訂正してください.
 F0 =F1 =1 
問題8-2について n の内積とは、
(x1 ,x2 ,...,xn ).(y1 ,y2 ,...,yn )
=x1 y1 +x2 y2 +...+xn yn 
を表します.i bj − aj bi  がくくり出せます.
それを行列式の形に直すこと2乗の形が見えてきます。
i=j のときも議論してください.
第9回(11/7)
 
プリント 
 内容 
クラメールの方法
クラメールの方法とは、変数が n 個あり、式の数が n 個ある連立1次方程式の解の i 番目の成分を具体的に求める方法です. 
解の分母と分子が行列式で表されます. 
具体的な式は教科書を見てください. 
 
行列のランクを小行列式を使って求めること.
n× m 行列 A のランク(rank)が r であるための必要十分条件を以下で見ます. 
N=min(n,m) と書くことにします. 
まず、次数が N×N の小行列式を考えます.つまりフルサイズの小行列です. 
例えば n≤m とする N=n です.サイズが N 小行列は、m 列のうち n=N 列を任意に選んでできる n×n 正方行列です 
つまり、サイズが N 小行列は m Cn  個だけ作ることができます. 
もしその小行列の行列式のうち、0 でないものが1つでもあれば 、この A の rank は N=n です. 
このような状況は n× m 行列がフルランク(full-rank)であるといいます. 
m≤n の時はこの転置を考えます. 
このフルサイズの小行列式が全て 0 であるとすると 、rank は N より小さくなります. 
次はサイズが N-1 次の小行列式を考える. 
この A から N-1 個の行を選んで、N-1 個の列を選んでできる小行列式を計算する. 
この小行列式のうち 0 でないものが1つでもあれば 、この A の rank は N-1 となる. 
もし全て 0 とすると ランクは N-1 より小さくなる.この手続きを繰り返して、小行列式のうち、サイズ r で初めて 0 でないものが現れるとすると A の rank は r となる. 
 
   
 
小行列式の作り方を理解していない人はもう一度教科書で確認してください.
このように行列のサイズを小さくしながら小行列式を小さくして行って 0 でないものが現れないとするとその行列は零行列となる.
このような行列の rank は 0 となる.
第10回(11/14)
 
第11回(11/21)
 
問題 )
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