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オンライン講義の記録:2020年度

筑波大学2020年度春BC:微積分Ⅰ(地球学類)
スライド形式の資料を配布して読んでもらう形式で講義を行なった.動画や音声による解説の提供は一切なし.これは他のオンライン講義で動画ばかり見せられて,学生は疲れているのではないかと思ったことと,主体的に知識を取りに行く姿勢を学んで欲しいことが理由であった.スライドの中から毎回あたり一つの問題を選んで,前半と後半に分けてレポート課題を課し,これを「できるまで講評を繰り返して再提出を求める」という評価方法で行うことで,フィードバックを重視した講義にするつもりであった.この趣旨に沿ってレポートを随時提出した受講生には,この方法は好評であった.ただレポートの締め切りを全て学期末に指定したせいで,期末にまとめて問題に取り組む学生が多数であり,お互い大きな負担になった.学期終了後のアンケートでも「レポートの締め切りを早めて欲しい」という,通常ではあり得ない(?)要望が多数寄せられた.スライドを配るだけの形式は良かったという声も一定数あったが,「解説をもっと詳しくして欲しい」,「動画解説が欲しい」という要望も多かった.

筑波大学2020年度春ABC:関数解析
この講義も上の微積分Ⅰと進め方は(理由も含めて)同じ.筑波大学の4年生の標準的な理解度が分からないままに準備したが,難し過ぎた模様.また新入生と違ってあきらめが非常に早いという印象を持った.登録12名のうちでレポートを一回でも提出したのは3名に過ぎず,かなり早い段階から講義資料を見ていない受講生も多かった.manabaの閲覧確認でそれが分かったので,途中からは逆に生き残っている人が退屈しないように敢えて難しい内容にも触れることにした(Krein-Milmanの定理など).

筑波大学2020年度秋AB:微積分II(地球学類)
春学期の続きなので,アンケートへの回答をある程度反映して,講義の方法を少し変えた.スライド形式の資料を配布して読んでもらう形式は同じだが,毎週の講義時間にTeamsでオフィスアワーを開催した.そこで出た質問への回答は後でQ&Aとして文書にまとめて公開した.利用者は多くはなかったが,Q&Aはこちらからフィードフォワードでむやみに資料の解説を詳しくするよりは良かったと思う.レポートは毎週期限をつけて,一回は個別講評を書き,二週間後までに再提出されたものの中から解答例になる優れたレポートを選んで公開するという方法をとった.これにより課題を溜める受講生は当然減ったが,講評を見て再提出する者はどちらかと言えば少数派であった.従って,レポートの講評でフィードバックを行うという考え方は,引き続き(全員に対しては)うまく機能しなかった.しかしともかく毎週レポートを見ることで,受講生が理解に苦しんでいるところがある程度分かるのは良かったと思う.また解答例は,公開してから再提出はできないようにしていたせいで,初めは見ない受講生がほとんどであった.これを改善するため,途中で解答例を写してもよいというように評価方法を変更した.

筑波大学2020年度秋C:微積分III(地球学類)
これは新年から週二回のペースで行うハイスピード講義だったので,大変だった.前の講義のようなフィードバックができないことは明らかだったので,受講して作ったノートを提出してもらって評価をし,またノートを見て全体向けに講評を書くなどした.このような評価方法は珍しいので,不安に感じた受講生も多かったようである.せめて半分過ぎたあたりで,詳しい講評なり,優れたノートの公開なりをすべきであった.またこの講義では初めて動画解説を試みた.再生回数を見るかぎり,初回の動画と,途中でスライドでは説明しにくい内容を動画中心で説明した回以外は,結局あまり試聴されていなかった(平均10回くらいで,一人が複数回見た可能性もある).文書から知識を取りに行く,という姿勢が身に付いたのだとしたら,それはむしろ喜ぶべきことである.

筑波大学2020年度秋BC:微積分演習F(地球学類)
この講義は秋Bモジュールは対面とオンラインのハイブリッドで行なった.具体的には対面講義での例題解説をiPadとスクリーンを使って行い,zoomで生中継と録画を行なった.解説は長くても合計で20分くらいなのでこういう方法が成立した.秋Cに入るあたり(年末年始)で新型コロナの感染が爆発的に拡大したので,以後はオンラインのみに切り替えた.ハイブリッドのときの対面参加者は半数くらいであったが,やはり講義時間中や終了後に質問にくる受講者は多く,演習は対面で行うことに意味があることを実感する結果になった.成績評価は毎回のテーマについて一つ問題を選んで「解答の要約と,その問題を選んだ理由」を書いてもらうレポートでつけた.これも珍しい評価方法なので,半分くらい過ぎたところで講評などをするべきだったと思う.しかし結果的にはほとんどの受講生がそつなく要約も理由も書けており,どれくらい演習を頑張ったかもレポートにはよく反映されていたと思う.

筑波大学2020年度秋ABC:関数解析入門
上の微積分IIと同じ方法で講義を行なった.問題点もほぼ同じで,途中で成績評価の方法を変更することになった.新入生に比べてあきらめるのが早いのは関数解析と同じ.関数解析の反省で開講前に予備知識のアンケートを取ったが,知識の程度にはかなりのバラツキがある印象で,予備知識をまとめた資料を作ることにした.5回目まで進んだところでアンケートを取ったところ,講義資料は「何度読んでも理解できない」が半数くらい,課題は一名を除いて全員が「難しい」と回答したので,課題にはヒントを出すなどの対応をとった.

オンライン講義の教訓まとめ:2020年度

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