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オンライン講義の記録:2021年度

筑波大学2021年度春BC:微積分Ⅰ(数学・物理学類)
スライド形式の資料を配布して読んでもらう形式で講義を行なった.動画や音声による解説の提供は一切なし.これは他のオンライン講義で動画ばかり見せられて,学生は疲れているのではないかと思ったことと,主体的に知識を取りに行く姿勢を学んで欲しいことが理由であった.スライドの中から問題を選んで,第1〜3回,第4〜6回,第7〜10回と3回に分けてレポート課題を課し,最初の二つは「できるまで講評を繰り返して再提出を求める」という評価方法で行うことで,フィードバックを重視した講義にした.昨年度の反省で締め切りを早めに設定したので,多くの受講生はそれを守って提出し,ある程度は予定通りの進行になった.しかし途中からはレポートの写しが多くなった(これは「受講生同士での相談可」としていたので不正ではない)ので,解答例を公開してそれを写してもよいことにした.それでもギリギリまで自力で頑張る人が一定数いたのは,数学・物理学類のプライドだろうか.

筑波大学2021年度春BC:微積分演習S(数学・物理学類)
演習問題を配布する形式で講義を行なった.動画や音声による解説の提供はこちらからはせずに,代わりに講義時間にTeamsで質問対応をしたが,あまり参加者はいなかった.仕方がないので,その時間に解答例を作って配布するなどした.成績評価は毎回のテーマについて一つ問題を選んで「解答の要約と,その問題を選んだ理由」を書いてもらうレポートでつけた.これは昨年の地球学類と同じで変わった評価方法なので,半分くらい過ぎたところで全体向けに講評を書いた.数学・物理学類だけに面白い問題を選択したレポートは多かったが,証明や解答を完全に書かないと不安になるのか,要約はあまり的確ではないように感じることが多かった.

筑波大学2021年度春ABC:関数解析
この講義も上の微積分Ⅰと進め方はほとんど同じだが,レポートの提出期限はすべて学期末にした.ただし昨年度よりは早めに提出することの利点は強調した.昨年度は明らかに難しすぎたようなので,少なくとも課題は易しいものに限ったが,依然として難し過ぎた模様.新入生と違ってあきらめが非常に早いという印象も昨年度と同様.登録11名のうちで,ちゃんと受講したと言えるのは5名だった.昨年は補足資料としてKrein-Milmanの定理などいくつかの高度な内容にも触れたが,今年はそれは控えた.75分×15回では抽象論と面白い応用の両方を紹介するのは難しく中途半端な印象になるので,Hilbert空間に限って量子力学か偏微分方程式のスペクトル解析の関連に触れるなど,工夫をした方が良いのかもしれない.

筑波大学2021年度秋ABC:関数解析入門
講義資料は昨年度と同じ(但し手書きをTeXにはした).昨年と同様,知識の程度にはかなりのバラツキがあることを想定して,予備知識をまとめた資料も事前に公開した.また今年度はリアルタイムのオンライン講義と,その動画配信を行った.視聴回数は毎回10〜20回くらいで,資料でわからないところを動画で補っているという声もあった.毎週の課題は「講義に関する質問」と「講義の中で証明せずに済ましたこと」の二つにして,後者には基本的にほとんど答えのヒントをつけた.そのため,昨年度より多くの受講生が生き残った.ただ5回目まで進んだところでアンケートを取ったときには,依然として「課題が難しい」という意見も二件あった.質問を課題にすることについては,こちらとしては理解度が測れて良いが,受講生の理解に役立ったかは疑問.質問してもそれに対する回答を見ていない(つまり成績のためだけに質問している)ケースも少なからずあった.労力を考えれば,詳しい解説付きの小テストの方が良いだろう.良い成績を取るための任意提出レポートについては,提出者は多数だったが0点でない点数がついた人数は昨年と同じ程度.できていない方のレポートを見ると基本的な内容の理解も不安になるが,数学ではよくある「解き方がわからないと無茶をする」の発露だろうから,あまり深読みしないのが良さそう.

オンライン講義の教訓まとめ:2021年度

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