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オンライン講義の記録:2022年度

筑波大学2022年度春BC:微積分Ⅰ(数学・物理学類)
独立して読めるスライド形式の資料,Teamsでのリアルタイムの動画解説,録画配信の三通りの受講方法を提供した.リアルタイムでは,録画配信で間延びしないために速いペースで解説を行なったこともあってか,すぐに人は減った.録画配信がどれだけ視聴されて,役に立ったかはわからない.成績評価は講義資料の中から問題を選んでレポート課題とし,第1〜6回は「できるまで講評を繰り返して再提出を求める」方法でフィードバックを重視した講義にした.一方で第7〜10回の課題は再提出なしで,どれだけ証明を書けるようになったかを評価した.昨年度と比較すると,講義や課題に関する質問がかなり多かった.解説動画で「教員の顔が見える」ことが関係しているような気もするが,確たることはわからない.一方で,再提出をしなかったり,途中で諦める学生も昨年度より多かった.こちらの理由は不明.再提出は履歴を残すためなどの理由でコメント欄に添付を求めたが,結局はmanabaの「再提出を求める」機能を使った方が良かったと思う.学生はmanabaで課題管理をしている場合が多く,またコースリンク機能を使うと子コースの受講生の新しいコメントがハイライトされないので,こちらも気づきにくくなるという問題がある(途中で気づいた).

筑波大学2022年度春BC:微積分演習S(数学・物理学類)
演習問題を配布する形式で講義を行なった.また講義時間にTeamsで発表練習の対応や質問対応をしたが,あまり参加者はいなかった.仕方がないので,その時間に解答例を作って配布するなどした.成績評価は毎週計算問題を1〜2問と,他に5回分のテーマについて一つずつ問題を選んで「解答,要約と,その問題を選んだ理由」を書いてもらうレポートでつけた.前者は正解するまで何度でも再提出可,後者は半分くらい過ぎたころに提出されたレポートには講評を書いた.計算は,普通の微分や積分の計算などが意外になかなか合わなくて,再提出の対応が予想を遥かに超えて大変だった.しかし学生の計算力について把握できたのは良かったと思う.問題を選ぶレポートは,配布した資料から選んだレポートが多かったが,中には面白い問題もあった.ただ解答を書かせると,こちらがそれを読んでいることを(無意識に?)見越して要約を書くのか,ほとんど情報量のない要約が多くなる.中間で講評を書いた人はその後の要約は明らかに良くなるので,途中で一旦締め切りを設けて講評を書いた方が良いのだろう.発表については希望者が一人だけだったが,対面に戻ったとしても80人クラスでどうするか,引き続き考えておかないといけない.

筑波大学2022年度春ABC:関数解析
この講義も上の微積分Ⅰと進め方はほとんど同じだが,レポートは3つに分けて,提出期限はすべて学期末にした.再提出可なので早めに提出することに利点があることは強調したが,結局かなり学期末に集中した.課題は易しいものに限ったが,アンケートを取るとヒントが欲しいという声が多かったので,最初の2つのレポートにはほとんど答えのヒントを出した.登録9名のうちで,7名がレポートを提出し,意味がないようなレポートは無かったので昨年よりは状況は改善した.なお講義内容について,昨年までとはかなり変えて,前半はHilbert空間に限って積分方程式の動機からコンパクト作用素のスペクトル分解定理を目指す流れにし,後半でさらに抽象的な理論を扱うようにした.ただそれでも,関数解析入門の内容から飛躍があるように感じるという意見があったので,これが良かったのかどうかはわからない.Rieszの表現定理を最初にやるのが,少し難しいのかもしれない.証明抜きで一旦認めてコンパクト作用素の理論をやることは可能で,そうするとFourier級数の一般化という視点は強調しやすい.

オンライン講義の教訓まとめ:2022年度

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