2007年度の数学系月例談話会


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2008年1月17日(木) 16: 00−17:30 (時間にご注意ください)
会場:自然系学系棟D棟, 8階 D814

庄司 俊明 氏(名古屋大学大学院多元数理科学研究科)
「有限Chevalley群の表現論とLusztig予想」

アブストラクト:
有限体F_qの元を成分とするn次正則行列の全体は有限群になる.これをGL_n(F_q)と表す.このように半単純リー群の有限体での類似物として得ら れる有限群を有限Chevalley群という.有限Chevalley群は,有限単純群の無限系列をほとんど全て含む,重要なクラスの有限群であり,した がって,その複素既約表現を分類し,既約指標を決定する問題は表現論の基本的な問題である.GL_n(F_q)については1955年Greenによって組 合わせ論的な手法で解決された.Greenの手法を他の古典群などに拡張する試みは,簡単には成功しなかったが,1976年,Deligne- Lusztigにより,l-進コホモロジーを用いた手法が導入され,1980年代にLusztigが一般の有限Chevalley群に対して既約表現の分 類を完成させた.既約指標の決定に関してはLusztigが指標層の理論を構築し,それに基づいて既約指標を計算するアルゴリズムを1985年頃,予想と して提案した.それがLusztig予想である,Lusztig予想については,多くの進展があったが,現在でもまだ完全には解決していない.講演では Lusztig予想の概略を述べ,その現状について解説する.


2007年12月6日(木) 15: 00−16:30 (時間にご注意ください)
会場:自然系学系棟D, 8階 D814

小林 亮一 氏(名古屋大学大学院多元数理科学研究科)
「Ricci flow unstable cell centered at the Kaehler-Einstein metric on the twistor space of positive quaternion Kaehler manifolds」

アブストラクト:
ペレルマンは,リッチフローを共役熱方程式とカップルさせたものを勾配流と見る汎関数$W$を導入して,その単調性と対数ソボレフ不等式を組み合わせて, リッチフローに有限時間で生じる特異点の解析を可能にする「局所非崩壊定理」を証明した.これは幾何化予想へのハミルトンプログラムの完成への道を開いた 結果である.本講演の前半ではペレルマンの汎関数と「局所非崩壊定理」の背景にあるアイデアを紹介する.ペレルマンは未発表の論文で,正のケーラー・アイ ンシュタイン計量を許容するコンパクトケーラー多様体上のケーラーリッチフローの解曲線全体が安定セルを形成していることを示した(この結果はTian- Zhuによって証明つきで出版された).本講演の後半では,ケーラー・アインシュタイン計量を中心とすつ不安定セル(したがって非ケーラーリッチフローの 解曲線から成る)を構成する試みについてお話したい.考える空間は正の四元数ケーラー多様体のツイスター空間である.底空間の四元数ケーラー計量とファイ バーのフビニ・ストゥディ計量をレビ・チビタ接続から決まる水平分布を使って足し合わせてできる自然な計量の2パラメータ族があるが,これの底空間とファ イバーの適当なスケーリングをとったものがケーラー・アインシュタイン計量になる.この2パラメータ族を含むケーラー計量は,ケーラー・アインシュタイン 計量だけである(これがツイスター空間の実構造の面白いところである).この2パラメータ族は,非ケーラーリッチフローの解曲線の集まりから成る「不安定 セル」であることを示す.すなわち各解曲線はリッチフローの古代解であり,その漸近ソリトンはケーラー・アインシュタインになっていることが示される.証 明で本質的なのは,正の四元数ケーラー多様体の曲率作用素に関するAlexeevskiiの曲率作用素の分解公式である.時間が許せば,この結果の,正の 四元数ケーラー多様体の幾何への応用についてお話したい.


2007年11月1日(木) 17: 00−18:00 (時間にご注意ください)
会場:自然系学系棟D, 8階 D814

Yaroslav Kurylev 氏(U. College London / 筑波大学大学院数理物質科学研究科)
「Boundary rigidity of broken geodesics and inverse problem」

アブストラクト:
Let $(M,g)$ be a Riemannian manifold with boundary $\partial M \neq \emptyset$. The classical {\it boundary rigidity problem} of differential geometry is the following

{\it Let, for any $z, w \in \partial M$ we do know the distance, $d(z,w)$. Do these data determine the manifold $M$ and its metric $g$?}

Accidentally, this geometric problem is a practically very important inverse problem, the so-called {\it inverse kinematic problem of geophysics.} Unfortunately, it is known that, in general, the answer to the above question is negative.

In this paper, we consider the {\it boundary rigidity problem for broken geodesics.} A broken geodesic is a union of two geodesic segments having the same endpoint. Looking for the broken geodesics in $M$ which have their starting points on $\partial M$, we introduce the notion of the {\it broken scattering relation} which is a generalization of the classical scattering relation for unbroken geodesics.

We prove that the broken scattering relation determines $(M,g)$ uniquely (ie up to an isometry) for {\it general} manifolds. The crucial step here is to show that the broken scattering relation determines the {\it boundary distance representation} $R(M)$ of $(M,g)$. This result can be applied to various inverse problems, eg to the inverse problem of the {\it optical tomography} and, at the end of the talk, we discuss this and other applications.

These results are joint with M. Lassas (Helsinki) and G. Uhlmann (Seattle).


2007年9月6日(木) 15:30− (時間にご注意ください)
会場:自然系学系棟D, 8階 814

原岡 喜重 氏(熊本大学大学院自然科学研究科)
「Rigidity for regular holonomic systems」

アブストラクト:
Fuchs型微分方程式は,微分方程式論に限らず,表現論・数論・曲面論など多くの分野に現れ,多くの場合にその大域モノドロミーの計算可能性が重要な問 題となる.大域モノドロミーが局所モノドロミーから一意的にきまる場合にはもちろん計算可能で,そのような場合をrigidと呼ぶ.rigidな微分方程 式については,大域モノドロミーのみならず,詳細な構造が解析されつつある.一方多変数超幾何関数の研究などを通して,regular holonomic systemをrigidityの視点からとらえると面白いということがわかってきた.この視点により,rigidでない方程式の大域モノドロミーの計算 可能性について,論じられる可能性が現れてきたように思われる.


2007年7月5日(木) 15:30−17:00 (時間にご注意ください)
会場:自然系学系棟D, 8階 814

硲 文夫 氏(東京電機大学)
「Discrete Tomography and Hodge Cycles」

アブストラクト:
「トモグラプィー」とは,本来3次元の対象をそのいろいろな方向での断面図から再構成する方法を指す.(いわゆる「CTスキャン」のCTは 「Computarized Tomography」の略である.)これに対し「離散トモグラプィー」は$\mathbb{Z}^n$上の関数$f$を,固定した$\mathbb {Z}^n$の有限部分集合$T$について,和$f_{T+{\bf v}}=\underset{{\bf x}\in T+{\bf v}}\sum f(\bf{x})(\bf{v}\in \mathbb{Z}^n)$の情報から再構成しようとする問題である.
講演では,この問題が$T$に付随する自然な$n$変数多項式の$\mathbb{T}^n$での零点(ただし,$\mathbb{T}=\{z\in \C;|z|=1\}$の分布によって完全に記述される事,そしてその結果ある種のCM型アーベル多様体のホッジサイクルのなす環の構造が決定できる事を 中心に述べる.


2007年5月24日(木) 15:30−16:30 (時間にご注意ください)
会場:自然系学系棟D, 8階 814

藤原 耕二 氏(東北大学大学院情報科学研究科)
「A characterization of higher rank symmetric spaces via bounded cohomology」

アブストラクト:
Bounded cohomology is introduced by Gromov. We give a characterization of higher rank symmetric spaces by bounded cohomology. Let M be a complete nonpositively curved Riemannian manifold of finite volume whose fundamental group does not contain a finite index subgroup which is a product of infinite groups. Let H^2_b(M) be the second bounded cohomology of M. We show that the universal cover of M is a higher rank symmetric space iff H^2_b(M) injects to the ordinary second cohomology H^2(M). The proof uses the celebrated Rank Rigidity Theorem, as well as a new construction of quasi-homomorphisms on groups that act on CAT(0) spaces and contain rank 1 elements.


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