筑波大学微分幾何学セミナー
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4月28日 (水) 15:15~16:45 Zoom | 山本 光 氏(筑波大学・数学域) |
変形エルミート・ヤン・ミルズ接続の基礎と最近の研究 概要: 2000年にLeung-Yau-Zaslowによって(限定的な状況ではあったが)「特殊ラグランジュ部分多様体(sLag)を実フーリエ向井変換すると変形エルミート・ヤン・ミルズ接続(dHYM)というものになる」ということが示された.従ってdHYMの重要性とSLagの重要性が等価であることが分かった.しかしながらdHYMの研究はSLagの研究に比べて非常に少なかった.しかし,2017年ごろから急速に研究が進み,深い結果や予想が提示され始めた.この講演の前半ではdHYMの定義の意味や基本的な性質を初学者にもなるべく分かりやすく伝えることに集中する.後半では講演者の結果も交えつつ(様々な研究者によって)示されたことと示されていないことについてのサーベイを行う. (本セミナーは大学院科目「数学フロンティア」対象セミナーです。) |
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5月25日 (火) 15:15~16:45 Zoom | 小野 肇 氏(筑波大学・数学域) |
Einstein-harmonic 方程式とスカラー曲率一定 Kähler 計量 概要: LeBrunは、複素曲面上で、電磁場付きのEinstein 方程式(Einstein-Maxwell 方程式)と共形Kähler なスカラー曲率一定計量(今日では共形Kähler, Einstein-Maxwell 計量(cKEM計量と略す)と呼ばれている)との関係を明示した。その後、Kähler 幾何において、cKEM計量やその一般化は興味深い研究対象の1つとなり、様々な結果が得られている。しかしながら、cKEM計量は高次元ではEinstein-Maxwell 方程式と直接関係はなく、「Einstein方程式の解を求める」という観点からは特に進展は見られなかった。今回の講演では、複素次元が偶数の場合に、スカラー曲率一定Kähler 計量から物質場(微分形式)付きのEinstein 方程式(Einstein-harmonic 方程式と呼ぶ)の解が得られることを紹介する。 |
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6月8日 (火) 15:15~16:45 Zoom | 三浦 達哉 氏(東京工業大学 理学院 数学系) |
曲線の曲げエネルギーと自己交叉 概要: Li-Yau は 1982 年に閉曲面の曲げエネルギーと多重度に関する最適な不等式を導出した。ただしこの結果は曲面の二次元性に強く依存するものである。本講演では最近得られた一次元曲線に対する Li-Yau 型不等式を紹介し、二次元の場合と様相が大きく異なることを観察する。また弾性流・弾性ネットワーク・弾性結び目理論などへの応用や展望についても可能な限り触れたい。 (本セミナーは大学院科目「数学フロンティア」対象セミナーです。) |
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6月15日 (火) 15:15~16:45 Zoom | 高橋 良輔 氏(九州大学 数理学研究院 数学部門) |
Deformed-Hermitian-Yang-Mills方程式について 概要: 微分幾何学の根底にある重要な問題の1つとして,幾何構造の標準化がある.特にシンプレクティック多様体の場合,特殊ラグランジュ部分多様体はそのホモロジー類の中で体積最小という意味で標準的であり,その存在は何らかの安定性と同値であることが予想されている(Thomas-Yau予想).一方で,deformed-Hermitian-Yang-Mills (dHYM)方程式は,Strominger-Yau-Zaslowミラー対称性を通して,特殊ラグランジュ部分多様体を複素多様体上の直線束上のfiber計量として記述する方程式であり,数学の分野ではLeung-Yau-Zaslowによって初めて導入された.本講演では,dHYM方程式の研究がThomas-Yau予想に対してどのようなアプローチを提供するのかを,講演者自身の結果(主に幾何学的フロー)も紹介しながら説明する. (本セミナーは大学院科目「数学フロンティア」対象セミナーです。) |
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7月20日 (火) 15:15~16:45 Zoom | 田崎 博之 氏(筑波大学・数学域) |
コンパクト対称空間の極大対蹠集合 概要: コンパクト対称空間の対蹠集合の概念の基本事項について解説し、対蹠集合と他の概念の関連性、極大対蹠集合を具体的に記述する方法について述べる。 さらにこの方法をコンパクト対称空間UI(n)=U(n)/O(n)とその商空間に適用して最近得た田中真紀子さんとの共同研究の結果を紹介する。 (本セミナーは大学院科目「数学フロンティア」対象セミナーです。) |
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8月3日 (火) 15:15~16:45 Zoom | 濱中 翔太 氏(中央大学) |
スカラー曲率に関する各点及びある積分量が有界な閉多様体上のリッチフロー 概要: この講演では、ある幾何学的な量が有界であるような閉多様体上のリッチフローについて説明する。 その量は大きく分けて二つで、共にスカラー曲率に関する量である。具体的には、それらの制限の下でそのリッチフローの最大存在時間の近くでの挙動がどうなるか、という問題を考える。 Di-Matteoは、時間と空間の混合ノルムを用いた量で表されるある積分量が有界であることがそのフローが 滑らかに拡張可能であるための十分条件になっていることを示した。このノルムはパラメーター (α, β) ∈ (1, ∞) で表されるものである。 講演の前半では、このDi-Matteoの結果の特異な場合、特に次元が4で、(α, β) = (p, +∞) (p > 2)かつ (+∞, 1) に対応する場合には、ある意味でのリッチフローの拡張可能定理が成り立つことを説明する。 また残りの時間で、スカラー曲率が(各点で)有界であるという条件についてもお話ししたいと思う。 |
オンラインで開催します。 参加を希望される方は微分幾何学のメンバーに相談してください。
10月19日 (火) 15:15~16:45 Zoom | 富久 拓磨 氏(早稲田大学) |
Rarita-Schwinger作用素について 概要: 重力微子を表すRarita-Schwinger場と,それを記述するために用いられるRarita-Schwinger作用素は物理学において研究されてきた.いわゆるスピン3/2版のDirac作用素であるRarita-Schwinger作用素は,近年,数学においても研究が行われている.本講演の前半では,Rarita-Schwinger作用素とRarita-Schwinger場の定義と基本的な性質について紹介する.後半では,Rarita-Schwinger作用素に関する2つの結果 「コンパクト対称空間上のRarita-Schwinger作用素の固有値(本間泰史氏との共同研究)」,「nearly Kähler多様体上のRarita-Schwinger場(大野走馬氏との共同研究)」について説明したい. |
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11月9日 (火) 15:15~16:45 Zoom | 永野 幸一 氏(筑波大学・数学域) |
Asymptotic topological regularity of CAT(0) spaces 概要: CAT(0)空間は大域的にAlexandrovの意味で曲率が0以下である測地的距離空間として定義される. 例えば,連結な完備リーマン多様体がCAT(0)空間であることと,アダマール多様体である, すなわち非正断面曲率をもつ単連結な完備リーマン多様体であることは同値である. この場合,Cartan--Hadamardの定理よりユークリッド空間に微分同相である. その一方で,CAT(0)空間は位相多様体であってもユークリッド空間に同相であるとは限らない. 本講演では「CAT(0)空間がいつユークリッド空間に同相になるか」という CAT(0)空間の位相正則性の問題に関する研究成果について報告する. より具体的には「CAT(0)空間は小さなユークリッド的体積増大度を持てば ユークリッド空間に同相である」ことを主張する漸近的位相正則性定理について紹介する. (本セミナーは大学院科目「数学フロンティア」対象セミナーです。) |
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12月7日 (火) 15:15~16:45 Zoom | 相野 眞行 氏(理化学研究所) |
滑らかとは限らない部分多様体におけるLaplacian Eigenmapsの収束とそのレート 概要: Laplacian Eigenmapsはラプラシアンの固有関数を用いた次元削減の手法であり,ユークリッド空間の適切な仮定を満たす部分多様体上にn個のデータがランダムに得られている際のLaplacian Eigenmapsの,n→∞としたときの連続極限はリーマン多様体のラプラシアンの固有関数を与える.このような研究はこれまで,部分多様体に対してリーチと呼ばれる量を下から抑えるといった仮定の下で行われてきた.リーチの下からの評価は内在的には断面曲率の上下からの評価および単射半径の下からの評価を導き,更に微分不可能な点を持つ部分多様体は,一様なリーチの下からの評価を満たす部分多様体列では近似しえない.このようにリーチの仮定は部分多様体に強い条件を課すが,本講演では内在的には同様の仮定を置きつつ,リーチの仮定を,極限に微分不可能な点が現れうるような弱い仮定に置き換えた場合のLaplacian Eigenmapsの収束およびそのレートについて述べる. |
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12月14日 (火) 15:15~16:45 Zoom | 佐々木 優 氏(東京高専) |
例外型コンパクトリー群E_6および関連する対称空間の極大対蹠集合 概要: コンパクト対称空間で定義される対蹠集合は,トポロジーをはじめとした対称空間上の様々な数理と関連を持つことが指摘されており,近年様々な研究がなされている.しかしながら,全てのコンパクト対称空間においてその極大対蹠集合の分類・構成が完成しているわけではない.とくに例外型に関しては極大対蹠集合の様子が全く分かっていない場合もある.本講演では,例外型コンパクトリー群E_6ならびにE_6の等質空間として与えられるEI型からEIV型コンパクト対称空間において極大対蹠集合の分類・構成を紹介する.また,極大対蹠集合の各元をより具体的に記述するため,EI型からEIV型コンパクト対称空間に関しては複素例外ジョルダン代数を用いた幾何的実現も構成したため,これらの実現も紹介する. |